今年も高校山岳部のイグルー講習
今週は例年この時期行う松本深志高校山岳部員のイグルー練習でした。白馬遠見尾根のスキー場トップ地蔵の頭です。
晴れてはいたのだけど、風が強く、猛烈な地吹雪の中での講習になりました。これまで数多くイグルー講習をしてきましたが、不思議と悪天になったことはなかったです。講習の段取りははじめ40分イグルスキーがデモで一個作る間、皆に観てもらうので、その間がちょっと寒いのですが、各々作り始めれば体が温まり、雪の中でもできます。
南岸前線で降雪はあったが晴れ、でも強風
今回は各々が作り始め、ブロック一段目を掘り出して周りに積んだ頃合いで、スキー場のパトロールさんが来て、強風のためゴンドラの運転を停止したいので下山をと促され、中止して下ることに決めました。完成させてもらいたかったけど残念です。泊まりなら良いけど日帰り予定だったので。ゴンドラが止まるとスキーではないのでゲレンデを歩くのも良くないとのこと。
悪天急変冬山体験
とはいえ地吹雪が猛烈で、冬山初体験の高校生たちにはイグルー作っているときからかなりキツい状況だったと思います。足先が冷たくなったと、はじめにイグルスキーが作ったイグルー内に避難する生徒もありました。
地蔵の頭からスキーゲレンデまで戻るほんの数百mの雪面も、来たときのトレースは完全にわからず、吹き溜まりの雪がまた腿までのラッセルになり、しかも地吹雪&ホワイトアウト。風上側の顔は白くエビ尻尾がつき、耳を覆わなければ冷たく痛い。素手で作業すれば即座に指が動かなくなる。こういう体験はやってみなくてはわからない。
直前に雪崩講義で「雪崩は傾斜地で積雪があればどこでも起きる」と聞いていたから、それも怖かったのではないか。その斜面が本当に雪崩れるかどうかの正解など、経験者だってわからない。この状況では、危ないかもと思っても、帰り道なら通るしか無いし、ホワイトアウトではそうそう距離を取ること自体がもっと不安だ。
イグルーができれば疲労凍死を免れる
こういう状況のときこそ、イグルー技術が物を言う。今回は短距離の上経験者がいるから必要はないが、白い闇の中で数時間進まなければ帰れない状況のとき、いたずらに彷徨えば限りある体力を消耗し、集中力減退、体温喪失してなし崩しに疲労凍死してしまう。暴風の中のツエルトでは体温低下は免れない、その点、イグルーさえ作れれば、靴を脱いで乾いたものに履き替え、無風快晴になるまで待てば良い。山のピンチのほとんどは待てば解決する。
1989年遠見尾根雪崩遭難追悼
イグルー作りの前に、まだ風が弱いとき、ここ地蔵の頭の沢を挟んだ急斜面で1989年の3月におきた研修中の雪崩遭難事故の追悼を行い花を添えた。その時死なずに済んだ赤羽さんを招き、昨年までずっと引率でここに来ていた西牧さんも来た。
僕らが下山を決めた強風の時間帯に、少し北の風吹山で10人巻き込まれる雪崩があり(全員無事)、大山でも。この強い風、関係があるかもしれない。
作りながらイグルートーク
いつもは技術的な話しをしながらイグルーデモ製作を見せるのだけれど、今回は若手相手だし、イグルー話を大盛りで手を止めずに語りました。
なぜイグルスキーはイグルーを作るのか?
なぜイグルーはテントに比べ安全なのか?
なぜイグルーで山に行くと楽しいのか?
なぜイグルーは北大山岳部で生まれたのか?
これらをトークしながらノコギリ入れ、ブロック積みをしたので息が切れました。でもみな熱心に聞いてくれていて嬉しかったです。
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