こんにちは、イグルスキー米山です。
きょうは北海道で、トドを見に行ってイグルーを作った話です。
北海道と言えばクマ、シカ、キツネです。しかしもうひとつ、忘れちゃいけないトドがいます。冬になると、もっと寒い千島、サハリンから「南国の」北海道に来て、ぬくぬくして、暖かくなると帰っていきます。人が近づけない断崖絶壁の海岸に、何百頭もきています。
北海道に居た2005年、私がイグルー術を伝授した北大の登山愛好学生Cさんが卒論のテーマで、このトドのウオッチングをしていました。場所は積丹半島の断崖海岸です。沿岸の自動車道路はトンネルに潜るので、トドにとっては人が全く来ない安全なところです。何百mもの崖の上から岩礁を見下ろすと、ぞろぞろ居ました。
このポイントは、車では行けず、山スキーを履いて延々藪山をトラバースした末にある急な藪の雪面です。雪山を自由に歩く、冬山登山愛好家にしか行くことができない場所です。
雑木こそ生えていますが、雪の斜面の先は断崖になっていて、たいへん危険な場所でもあります。Cさんはここに毎日通い、トドの数を数え、もうおなじみの個体の識別もして、望遠鏡でストーカー的に観察していました。
こんな吹雪の吹きさらしで張り番とは。なんて過酷で素敵な卒業論文だろう。北海道大学にはこんな地味で忍耐のいる野生動物や自然科学の現場研究者がたくさんいます。
ベストポイントにイグルーを作ってプレゼントしました。
トドは、積丹沿岸の漁場の魚を網を破いて遠慮なしに平らげてくれるので、周辺の漁師には死活問題です。やりたくはないけど鉄砲で脅かしたりもしますが、ほとんど効果がありませんでした。一匹が一度に食べる量は、軽トラ一杯分くらいは軽いのではと思いました。
トドの体には、焼印がついているものもありました。カムチャツカでの研究者が個体識別のために付けたそうで、ロシア文字です。荒っぽいですね。他には、海洋ゴミのポリバケツの底の抜けたものが、襟巻きみたいに首から外れずに困っているトドもいました。漁師も辛く、トドも辛く、この海を生きていました。
一部のトドは函館にまで来ていました。函館山の東海岸は、30万都市のすぐ脇なのに断崖の秘境で、陸から楽には行けない場所です。私はときどき、東海岸のトドを見に出かけました。函館山の上にもイグルーを作って見たいと思っていましたが、果たさずに町を離れました。
きょうはここまで。またね。
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