槍ヶ岳の真正面イグルー

イグルスキーのイグルー史
槍ヶ岳の真正面に鷲羽岳攻略前線イグルーを築城。夕焼け浴びて最高。入山二日目。20018.2月

こんにちは、イグルスキー米山です。

テントではちょっとコワい場所のイグルーシリーズです。

弓折岳山頂イグルー、2018年2月

新穂高温泉から蒲田川左股をぐっと奥まで進み、鏡平の西の尾根を直登して弓折岳山頂にイグルーを作りました。狙いは鷲羽岳です。山深いところにあるので、まだ未踏でした。百名山を全部登る気は特にありませんが、まだ登っていない名峰(素敵な山)は百名山であることも多く、どうせ登るなら、夏の沢を直登するか、厳冬期で行きたいもの。人の作った道に世話になって登るのではもったいないです。

双六と三俣蓮華岳を東側から巻いて鷲羽岳に直進するルートは、晴れていれば目標は明らかだ。問題はガスった時。鷲羽岳の左奥に水晶岳が見える。本当はあそこまで行きたかった。

退路に最適、地形の変わり目にイグルー

弓折岳山頂にイグルーを作った理由は、視界がなくなると尾根の下降点がわかりにくいからです。ここに泊まっていれば、日数不足で下山するときにホワイトアウトでもただ磁石で方向を切って下れば良い。下降点を探すのに困らないからです。これより奥に泊まると、視界がないときはかなり苦労するはずです。このさき双六岳をトラバースして三股山荘から鷲羽岳を往復するコースは、視界が見えていないと地形が難しいからです。

魔性の女、鷲羽岳が「おいで~、おいで〜、ボクたちおいで〜」と美しい姿で誘いかける。我々は両目をハートにして吸い込まていく。そして帰路はホワイトアウトの防風。氷点下10℃。写真中央の三俣山荘周辺ではホワイトアウトで何も見えなくなった。

鷲羽岳、幸運なアタック、帰り道に罠

イグルーから鷲羽岳への往復は片道5時間の1日仕事です。双六小屋から三俣山荘の間は、だだっ広い雪原のトラバースで、視界がなければスピードはガタ落ちです。白い闇の中を最速で進むことはできません。行きは好天、美しい鷲羽岳がおいでおいでと手招きをしていて、僕らは吸い寄せられるように山頂に到達しました。

しかし、帰路、天候は変わりました。広大な黒部川源流の風景を徐々に霧が覆い、三俣山荘を過ぎたあたりで完全なホワイトアウトに。

イグルーが作れれば全然怖くない

地図と磁石ではるか彼方の弓折岳イグルーに帰ろうとしますが、視界が数mの白い闇では、到底スピードを出して進めません。山での判断は一刻を争う競技スポーツのようなスピード感はありません。数時間後に打つ手がなくなってしまわないように、立ち止まって冷静に考えさえすれば、生還できることが多いのです。

今夜はこのあたりで泊まろう、というのが最適解でした。私はイグルーが作れます。こんな時、ツエルトだけならどんなに寒くて心細いだろうと思います。ザックを下ろしてノコとスコップを出そうとしたところで、「相棒が三股山荘の冬季小屋を掘ろう」と提案しました。

結果、大雪原のホワイトアウトで小屋を探し当てるのに小一時間彷徨い、地下3mほどに埋もれた冬季小屋の戸を掘り返すのにも1時間かかりました。中は真っ暗、物置のようなところでした。持っていたマットと、非常用防寒アタック装備を全部着込んで、行動食をむしゃむしゃ食べて、シュラフカバーに入ってザックに脚を突っ込んで眠りました。

でも確信した。イグルーを作れる自信があると、どんなホワイトアウトも全然怖くない。最高に自由な気分だった。

槍ヶ岳は、ここから見ると大きな山塊であってその先が小さく尖っているだけに見える。ここからはショボい穂高よりも圧倒的に立派。

絶景のイグルー

翌日、視界は悪かったけれど100mくらいは見えるようになったので、一日かけて弓折岳のイグルーに帰還しました。槍ヶ岳を真正面に見るこのイグルーは最高の立地でした。もう一泊して笠ヶ岳を往復してもいいくらい。でも、一山行にメインは一つがふさわしい。あまり欲張らないほうがいいと思います。雪のコンディションもよく、下りは延々長い斜滑降で弓折岳の南の谷へ滑り降りました。

夜明け前。水槽の中の槍ヶ岳。

山行記録: 《北ア》新穂高温泉から鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳厳冬期アタック
2018年02月18日(5日間) 槍・穂高・乗鞍, 積雪期ピークハント/縦走 / yoneyamaの山行記録

きょうはここまで。またね。

 

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